冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「保―! グローブ忘れてる」
その声が届くと、保は苦笑いしながら澪の方に駆け寄ってきた。
「悪い悪い。うっかりしてた。妊婦走らせちゃってごめんな」
「ううん。このくらい平気。じゃあね」
そう言って踵を返した。すると家の門の前に一台の車が止まるのが見えた。
誰だろう? 黒のセダンで、見たことがある車種。それに東京ナンバー……。
(まさかね)
だが次の瞬間、澪は息が止まりそうになった。
「澪!」
堂々とした振る舞いで降りてきたのは、匠馬だったのだ。
「どうして……」
「会いたかった」
優しい眼差しで澪を捉える。だが隣にいた保に気がつくと、その目は鋭いものになった。徐々に近づいてくる匠馬。澪は困惑し口元を押さえ、ふるふると首を振っている。
「全部片付いたんだ。だから迎えに来た」
「なに、言って……」
「澪? そのお腹」
匠馬が大きなお腹に気づき、一気に眉間に皺を寄せる。澪はハッとして、咄嗟に保の背中に隠れた。
「妊娠、してるのか?」
「……」
「澪」
匠馬は険しい表情で、澪と保を交互に見ていた。