冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


押し問答が続く。今、匠馬の顔をまともに見たら、口を滑らせてしまうかもしれない。何もかも話してしまうかもしれない。自分の気持ち、当時のこと、お腹の子どものことも……。

匠馬だっていきなりあなたの子どもだと言われても、迷惑に決まっている。困った顔は見たくない。

「あの、今日のところは帰ってもらっていいですか? 身重ですし、混乱しているようなので」

見兼ねた保つが庇うように言うと、匠馬は絶望を飲み込んだような顔でため息を吐いた。そして小さく「わかった」とつぶやいた。それを聞いて澪はホッとする。

「でも最後にこれだけ聞かせてくれ。君はまだ俺を想ってくれている。お腹の子は、俺の子じゃないのか?」
「ち、違います」
「じゃあどうしてそのネックレスをしている。質に出すと言ってたじゃないか」
「そ、それは」

澪は咄嗟にネックレスを掴んだ。これは心細い澪を支えてくれたもの。どんなに陰口を言われても、噂をされても、これがあったから耐えられた。お守りみたいなものだ。

「それに、退職した日、親父の元を訪れたらしいな」

そう言われ、澪は咄嗟に俯いた。



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