冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
澪はあの日、会社を出たあと幸之助に挨拶に行っていた。そして匠馬に力を貸してほしいと頭を下げていた。
「親父に聞いた。澪が泣いていたとも」
「……っ」
「急に悪かった。また来る」
匠馬は寂し気に言葉を並べると、停めていた車に乗り込んだ。白い煙を吐きながら走り出す車。いったい何時間かけてきたのだろう。
「よかったのか?」
保が遠慮がちに切り出した。
「……うん」
「父親じゃねーの?」
「違うよ。ごめんね、巻き込んじゃって。練習頑張って」
よろよろと力なく歩を進める。
まさかこんなところまで匠馬が来るなんて思いもしなかった。しかも妊娠しているのがバレてしまった。
また来ると言っていたが本当だろうか。澪は不安と期待が入り混じったような複雑な気持ちで、家の中へと入って行った。