冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
嫉妬と憎しみの感情は、一夜明けても冷めるどころか、ますます増大していた。
あのあと車を何時間も走らせ、一時間寝た程度で、匠馬は出社した。寝不足はなかなか体にこたえたが、匠馬は何度だって澪の元に行くつもりでいた。
コンコン
「社長」
そこにドアをノックする音が響いた。
「入れ」
「失礼いたします。社長、頼まれていた資料です」
入ってきたのは一花。澪がいなくなって、一花が匠馬の秘書業務を兼任していたのだ。
「あぁ、ありがとう。そこに置いておいてくれ」
「はい。では、失礼いたします」
一花が一礼して出て行く。その後姿を見て、匠馬は咄嗟に一花を呼び止めた。
「待て。ちょっと聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう」
「変な質問だが、妊婦が歩きずらくなるのは、だいたい何カ月くらいからだ?」
「はっ?」
一花は驚きのあまり、社長相手にも関わらず、失礼な返答をしてしまった。だが匠馬はいたって真剣で、一花は慌てて顔を引き締めた。
「妊婦、ですか」
「あぁ。こう、なんというか、がに股になったりする時期だ……」
あのとき、澪はすごく歩きづらそうで、重たそうだった。だがあれが何カ月くらいなのか、匠馬には予見できなかった。