冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「社長がネクストファーマと会食に行かれた日です。社長がお見合いするらしいって話をしたら、急に泣き出したので驚きました」
それを聞いて、匠馬はガツンと頭を殴られたような気持ちになった。
(つまり、澪はネクストファーマの令嬢との見合いを知っていたということか? それにもかかわらず、あの日澪は毅然とした態度で俺を見送ったというのか)
「他には何かないか? 小さなことでもいい」
「そうですね……連日すごく体調が悪そうだったり、目が腫れていたりしていたこともあったかと」
(そういえば、顔色が悪い日が続いていた。妊娠していたからだったのか。なぜ俺はあのとき気づかなかったんだ……)
「そうか、ありがとう、赤羽。引き止めて悪かった」
「いえ。お役に立てるといいですが」
一花は何か悟ったような顔で、社長をあとにした。
(もし8か月くらいだったとしたら、やはりお腹の子は俺の子どもの可能性が高い……)
澪は匠馬のために身を引いたということだろう。
『社長だから好きだった』
あの言葉は、この騒動から匠馬を守るための嘘。
「俺はなんてことを……」
握ったこぶしに、爪がくいこんでいる。口元はわなわなと震えていた。
「ごめんっ、澪……」
それからしばらく、匠馬はその場から動けなかった。