冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
◇◇◇
それからというもの、匠馬の声が耳から離れなかった。封印していた気持ちが膨らみ、上の空になることが増えた。
「……お? 聞いてる?」
肩を揺さぶられ我に返る。
「あ、ご、ごめん。何の話?」
「澪? どうしたの」
食事中だということをすっかり忘れていた。気づけば、光江が心配そうに澪を見ていた。
「ううん、なんでもない。で、なんの話だっけ?」
「もうすぐ出産でしょ? すぐに病院に向かえるように、そろそろバッグに入院グッズを詰めておいたほうがいいわよ」
「そうだね、わかった」
予定日は来月。出産まで一か月をきった。初産は遅れるというが、最近お腹が頻繁に張るし、早めに用意しておいた方がいいだろう。
「澪、話したくないかもしれないけどね」
「え?」
突然、光江が苦悶の表情で澪を見た。そして言いづらそうに切り出した。
「職場の人に聞いたの。この前東京ナンバーの車がうちの前に停まってたって。誰がきたの?」
それを聞いて、むずっとするような、気まずい気持ちになった。