冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
田舎のネットワークは怖い。数日前のことが、あっという間に知れ渡っているのだから。
「……以前働いていたとこの社長さん」
「どうして社長さんが、澪に会いに?」
澪は箸を握ったまま、テーブルを一点に見つめた。これ以上心配や迷惑はかけられない。澪は重い口を開いた。
「父親は彼なの。でも住む世界が違うと思って、身を引いた。彼はこれからうんと大きな仕事を請け負って、大勢の従業員の人生を背負っていかなきゃいけない立場。邪魔になりたくなかったの。だから何も言わずに逃げてきた」
「澪……」
「でも大丈夫だから。心配しないで。お母さんだって私を一人で育ててくれたじゃない。私だって頑張れるよ。出産したら、ちゃんと親孝行するね?」
笑みを張り付け顔を上げる。だが光江は余計に胸が痛んだ。澪の作ったような笑みが、あまりにも悲しそうだったから。
「澪、それでいいの? その社長さんはまだ澪のこと……」
「いいの。もう終わったことだから」