冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
あっけらかんと言われ、澪はその度にホッとする。育児とは孤独になりがちだが、手を貸してくれる人が周りにいて、澪は恵まれていた。
「それにしても美雨は、澪に似てきたわねー」
「そうかな?」
「うん。そっくり。早く会いたいわー」
そう言って6カ月の娘に満面の笑みで手を振っていた。
涙のお別れをしてから半年。光江はあの家で、縫製工場に行きながら一人で頑張っている。しかも、田舎では「神谷さんちの娘さんが石油王に見初められ嫁いでいった」と騒がれているらしい。
きっとその石油王とは匠馬のことだろう。最初聞いた時は笑った。
玉の輿玉の輿と、田舎では大盛り上がりしていて、その熱は半年たった今も収まらず、東京ナンバーの黒のセダンを見たら、女性陣の背筋が伸びるのだとか。東京ナンバーの石油王なんて、聞いたことない気もするが。
澪のせいで肩身の狭い思いをしていた光江も、匠馬のお陰で石油王の義理の母とあがめられ、もてはやされているらしく、光江も調子に乗って「いいでしょー」と否定もしていないのだとか。いやはや、光江らしい。