冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「いいんですか? ありがとうございます」
澪は一花に美雨を託すと社長室をノックした。
その瞬間「入れ」という声がした。懐かしくて、思わず顔がにやける。
「失礼します」
一礼して中に入る。するとその瞬間、澪は思わず目を丸くした。来客用のソファに、見覚えのある男性が二人並んで座っているのだ。
「どうして林田さんがここに?」
「澪さん、うちのせがれが大変申し訳ないことをしてしまったようで。本当にすみませんでした」
父である和フーズの社長が、澪を見るなり土下座する勢いでひれふす。その隣で、誠がぶすっとしたような顔をしていた。
「これはあの時のお金です。どうかお受け取りください。利子もつけさせていただいております」
「あ、いえ、その……匠馬さんこれはいったい」
側にいた匠馬に遠慮がちに問うと「まぁ、座れ」と澪をソファに促した。
澪はもうすっかりあのときのことを忘れていたと言うのに、匠馬はしっかり落とし前をつけるつもりのようだ。そして匠馬は、ビジネス用の顔で淡々と話し始めた。