冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「林田社長は長年、息子の誠さんの社員へのパワハラや、金遣いの荒さに、困り果ていたそうだ。反省させようと少しの間家を追い出していたそうだが、すぐに金が底をついたため、アプリで知り合った女性から金を巻き上げ、遊んでいたらしい」
「本当に申し訳ございませんでした。こら、誠お前も頭を下げろ!」
林田に言われ、誠はしぶしぶ頭を下げていた。パーティーのときは「誰に口をきいている」と啖呵を切ったのに、えらい違いだ。匠馬から仕事を切られて困るのは、和フーズのほうなのだろう。
「どうする澪。澪が許さないと言えば俺は今後一切、和フーズとは取引しない」
「そんな……!」
社長が悲痛な面持ちで顔を上げる。そして「お願いしますお願いします」と懇願している。
匠馬は優しい反面、こういった冷徹で容赦しない面も持っている。いや、持たなければ経営者はできないだろう。大事な妻を傷つけられて、澪以上に腹を立てていたのだろう。
「私も悪かったんです。林田社長、顔を上げてください」
「み、澪さん……」