冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
今にも泣き出しそうな林田に、澪は笑顔で頷く。
そもそも林田は悪くない。悪いのは誠だ。親子とはいえ、息子の悪行に責任を取る必要はない。
それなのにこの期に及んで、誠はおもちゃをとられた子どものような顔をしている。彼はきっとこの先も変わらないだろう。
「誠さん、お父様に頭を下げさせて恥ずかしくないですか? いい大人なんですから、ご自分で責任をとるべきです」
誠は不貞腐れたように、ふいっと顔を逸らす。
「わかりました。では、誠さんを解雇するということで手を打ちましょう」
「そ、そんな!」
林田の顔が一気に青白くなる。この案には誠も、息を呑んでいた。
「誠さんはきっと変わらない。彼にパワハラを受けた社員や被害者のことを想えば、当然だと思いますが」
澪の豹変に二人ともオロオロしていた。綺麗な顔立ちということもあり、まるで極妻のような貫禄がある。
今この中で誰に決定権があるかと言えば、澪だ。澪が白と言えば白になるし、黒といえば黒になる。
そんな澪を匠馬は腕組みをし、薄すら笑いを浮かべながら見ている。