冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「う、嘘です! ごめんなさい!」
「私への謝罪はもう結構です。他に謝る相手がいらっしゃるのでは?」
「ただちに謝罪にいきます。金も返します!」
やっと立場を理解したのか誠が焦りだした。聞けば、澪以外にあと一人、100万ほど借りている女性がいると言う。
「頼む、だからそれだけは勘弁してくれ」
「誠意をもって謝罪しますか?」
「謝罪する! 本当だ! 一筆書く!」
「わかりました」
誠は紙とペンを取り出し、その場で誓約書を書いた。それを見届けると、澪は匠馬に目で合図を送った。
「寛大な妻に感謝しろ」
「は、はい!」
「いけ」
匠馬の声に二人は逃げる様にして社長室から出て行った。匠馬と澪はその瞬間、ホッとしたようにソファの背にもたれた。
「よかったのか? あれで」
「はい。それに、なんの疑いも持たなかった私も悪かったんです」
「なかなかよかったぞ。怒った澪も」
「からかわないでください」
途端にかぁっと頬が熱くなる。あんなふうに誰かに敵意を向けるのはやっぱり澪には向いていない。なんだか途端に疲れてしまった。