冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
これまでのことが積み重なって、今日ついにポキッと折れたのだろう。きっと被害を受けているのはまどかだけではない。
あのレビューのせいでスタッフが辟易してる。澪はいたたまれない気持ちになった。
「今日は帰ってゆっくりしたほうがいいですよ。支配人には私から伝えておきます」
「ありがとうございます、神谷さん」
まどかは何度も頭を下げていた。だけど澪は複雑だった。種をまいたのは自分。そう思っていたのだ。
その日、澪は匠馬に今日の出来事を報告していた。
「そうか。わかった」
「少し疲れていたようなので、桜井さんには休暇を取るよう言ってあります。あの、これも林田さんのせいでしょうか。あのお客様は林田さんに頼まれてこんなこと……。桜井さんに聞いたところ、昨夜チェックインしたときは、すごく感じのいいかただったと言っておりました」
そう言えば匠馬は難しい顔をした。
「彼が人を雇ってクレームを入れたとは考えにくい。そのお客様はもしかすると宿泊中にあの低評価のレビューを見て、触発されたのかもしれない。人間そういったものを見てしまうと、良い悪いの判別がつきづらくなる。それがSNSの怖いところだ」
澪は匠馬の冷静な見解に、小さく頷く。確かに匠馬の言う通りかもしれない。