冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
せっかく弾む気持ちで泊まりに来たのに、そんなものを見せられたら、途端に自分が間違っていたのかもしれないと思うだろう。
そして疑心暗鬼になって、普段気にもならないこと
が気になり始める。
昨夜、お客様がどんな気持ちで部屋で過ごしたのか……。そう考えると、彼もまた被害者なのかもしれない。
「サイト側には明らかに悪意のあるものは消してもらうように依頼している。無断キャンセルの件も、今手を打っているところだ」
「わかりました」
「それと、最近調子が悪そうだが、大丈夫か?」
「え?」
どうしてそれを……。
匠馬の前では、気を張って普段通り振舞っていたつもりなのに。やはりこの人の目は誤魔化せない。
「大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます」
「何かあればすぐに言ってほしい」
「はい」
濁りのない瞳を前に、こくりとする。一花にしろ、匠馬にしろ、これ以上周りに心配をかけてはいけない。
そもそも社長に心配されるなんて、秘書としていかがなものか。きちんと静養して治そう。そう心に決め、社長室をあとにした。
数日後、自分の体に起こっている衝撃的な事実を、突き付けられるとも知らずに。