冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


ホテルに着くと、いつもと同様、支配人らに出迎えられた。

今日は例のキャンセルの件や、口コミの件を聞くことになっている。澪も匠馬の後に続くように、中へと入った。

支配人によれば、週末に60名の団体の予約が入っていたが、無断キャンセルになったとのこと。予約者の電話番号も住所もどれもでたらめで、そういった事案が3件ほど続いているのだとか。

「私どもも困っておりまして」

50代中頃の支配人が、頭を掻きながらしょぼくれた様子で言う。

「それにその予約の電話をとった従業員が責任を感じてしまって、辞めるというのですよ。何度も止めたのですが、あまり無理強いするのもよくないかと……」

話を聞いているだけで、歯がゆい気持ちが膨らんでいった。

この前まどかが泣いていたように、その子もきっと心を痛めたのだろう。悔しくてたまらない。匠馬はきっと、もっとだろう。


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