【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
私が華道に夢中になったのは、上京してまもない頃だ。
あの頃の私は、恋人に裏切られ大学も退学することになってどん底だった。上京してもどうすれば分からなくて、貯めてあった貯金でホテル生活をしていた。
そんな時に出会ったのが【華道展】で、花に魅了された私は今の花屋さんにアルバイトとして働かせて頂きながら定期的に開催されている華道展にお邪魔していた。
「……ゆっくりしていってくださいね」
「はい」
彼が去ってから、時計を見る。
パフォーマンスまで五十分もあるや……もう一度最初から見ようかな。
そう思っていたその時、会場内がざわついた。なんだろう……そう思って近くにいたスタッフの人に聞く。
「花が届かないらしくて……」
詳しく聴くと、パフォーマンスで使う花が発注ミスで届かないとのことだった。
「あの、責任者の方と出会えますか?」
「……え?」
「私、花屋で働いてるんです。なんの花が必要なんですか?」
スタッフさんは「お待ちください!」と言って奥へ入っていった。
すると、出てきたのは千賀さんだった。驚くが、今は花だ。