陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 大体いつもあたしが折れてしまって、二度寝コースになっちゃうんだけど……。

 でも今日はそうはならなかった。


 ピロロロロン
 ピロロロロン


 あたしのスマホに電話がかかってきたんだ。


「電話、出なきゃ」

「無視しろよ」

「そう言うわけにもいかないでしょ?」

 陽呂くんの腕に抱かれたままあたしはベッドサイドに置いてあったスマホを取った。


「あ、おばさんからだよ?」

 表示されていた文字は【渡瀬・母】。
 陽呂くんのお母さんからだ。


「は? 何の用だよ」

 一気に不機嫌度数が上がる陽呂くんだけど、電話を無視するわけにもいかない。

 それに結構コール音が鳴っているのに切れる様子もないし。
 出てくれるまで待つ、って感じ。


「あ、おはようございます」

 陽呂くんの腕から出られないまま電話に出た。


『おはよう美夜ちゃん。朝からごめんなさいね? もしかしてだけど、うちの子まだ美夜ちゃんのところにいるかしら?』

「あ、はい。います」


 陽呂くんが金曜の夜にあたしの部屋に来ていることを陽呂くんの両親は知っている。

 もちろん、その目的も。


『やっぱり……。いつも迷惑かけてごめんなさいね? せめて寝るときは自分の部屋に戻ってきなさいって言ってるんだけど……』

 あの子聞かないのよねぇ、と苦笑していた。
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