陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
「あの……どうしたの?」

 愛し気にジッと見つめられるばかりで、あたしはどんどん自分の体温が上がっていく気がした。


「ん? 可愛いなぁって見てた」

「っっっ!」

 心臓がひときわ大きく跳ねて、止まるかと思った。


「もぅ……陽呂くんはあたしを殺す気なのぉ?」

 泣きたくなるほど恥ずかしくて両手で顔を(おお)うと、その手を掴まれて羞恥に染まった顔をあらわにされてしまう。

 陽呂くんは器用に片手であたしの両手を拘束してしまった。


「殺すわけないだろ? こんな風に触れられなくなる」

 そう言って、あたしの鼻先にキスを落とす。

「んっ……だって、ドキドキしすぎて苦しいよ……」

 正直に苦しいことを伝えると、陽呂くんはあたしの左胸に顔を寄せる。


「……陽呂くん?」

「……ドキドキしてるのは、ココ?」

 そう言うと、陽呂くんは服の上から心臓がある辺りに唇を落とした。


「っっっ!!?」

 今度こそ、心臓が止まった。


 唇や首筋、あとは頭や目じりや耳とか。
 それと鎖骨くらいかな?

 陽呂くんの唇が触れた事のあるあたしの体は。

 それなのに、服の上からとはいえ……む、胸に!?


 あたしは驚きと羞恥で口をはくはくと開け閉めすることしか出来ない。
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