GET BACK TOGETHER
『よし!パァーと歌お!』

張り詰めた空気を変えようとしたのか、男子の一人がマイクを掴んで歌い出した。

ありがとう、空気を変えてくれようとしてくれて。


「絵麻、大丈夫?」

左隣の朋ちゃんが私の顔を覗き込んだ。

「トイレ行く?」

右隣の沙希ちゃんまで。

私はこの二人に気を遣わせっ放しだ。

「もう終わったことだよ。私は気にしてない」

笑顔を作ってそう返すと二人は「それなら良いけど」と言って体勢を元に戻した。


カラオケボックスで良かった。
照明がほんのり薄暗いお陰で瞳に貼っている涙の膜はバレていなかったから。


私は暫くの間、わざと自分の家の掃除のことを考えていた。

違うことを考えれば気が紛れるなと思ったから。

お風呂の掃除もしっかりしたいし、洗濯槽も綺麗にしたい。

やることはたくさんあるなって。

すると少し気が紛れてくれて。

そのお陰で涙が引っ込んでくれた。

でも少し一人で落ち着きたいから、一曲聴いたらトイレに一旦隠れようと決めた。
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