冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「反対されている間に彼女の父親は探偵を雇い、わたしの身辺調査を依頼したり、当時のわたしの部屋の盗撮や盗聴とかも当たり前のようにな」
「…ひどい。そんなの犯罪じゃないですか。結婚を反対した相手のことをどうしてそこまで…」
「さぁな。それで、解ったことがふたつあったんだ。そのうちのひとつが私に子を作るちからがないってことだったのだ」
「ーーえ?ちょっと待って下さい。だって、子を作れるかどうかを調べるってーーーまさか…」
最悪な想像をしてしまい、ロボットだった顔が青ざめる。
「…私の部屋なり、ホテルなりの、した後で私達がいない時に…だろうな」
うっ、と思わずえづいてしまう。
だってあまりにも気持ち悪い。その父親のことが。でもーー、
「でも、そんなの本当に仁さんので調べたのかーー、」
「わたしもそう思ってな、自分の足で病院に行って調べて貰ったんだ。3、4件回ったが…結果はどこも同じだったよ」
ハハッと力なく笑う仁さん。わたしは言葉が出なかった。
「それが致命傷となって、彼女とは別れた。彼女も最後は私から離れることに納得したらしいしな…。それからはかなり荒れたよ。それこそ、もう恋なんてしないと思うほどに」
最後の言葉がグサリとわたしの胸に刺さる。
けれど、
「それなのに、こんなオジサンになってから自分より20歳も若い千聖に恋するなんて、思ってもみなかったよ」
そう言って本当に嬉しそうに微笑むから、わたしはすっかり「人間」に戻り、顔を赤らめる。
「…そう言えば、いつどんなタイミングでわたしのこと好きになってくれたんですか?」
わたし史上最大の謎なのだこれが。