冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
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少し季節が進んだ2月の下旬。
再び我が家にやって来た瑠璃子さんと光輝くんを囲み、
DNAの検査の結果をまり子さんも含め全員で見た。
そこには、難しい事がたくさん書かれていたけれど、わたしでも解るように記してあったこと。
それはーーー、
「不一致」
の、文字だった。
仁さんの話を信じてないわけじゃないんだけど、やっぱりこうして正確に血の繋がりがないと証明されると真底ホッとする事が出来た。
「どういうつもりでこの子がわたしとの子だと言い張ったかはわからんが、今の技術を前に嘘はつき続けられないな。…ハッキリしたところでそろそろ帰ってもらおうか」
吐き捨てるように仁さんが瑠璃子さんにぶつけた言葉を彼女は青い顔で受け止めた。
けれど、
「仁…。わたし、今でも貴方の事が忘れられないのっ」
彼女は諦めなかった。こうしてひとつの事実が明白になったのに彼女はなおも仁さんに縋(すが)る。
「わたしなら、そんな子よりも仁に相応(ふさわ)しい妻になれるわっ!」
ビクリと反応したわたしの肩を仁さんが優しく抱く。「大丈夫だ」と。
「…最愛の妻と離婚して、浮気して子供まで作っていた事が明らかになった女と一緒になれと言うのか?」
「それはっ…!だって、仁がなかなか結婚話ししてくれないからっ。だから既成事実を作ってしまえと思ったんだもの。子供が出来れば仁だって、」
「考えが浅はか過ぎて笑えるな」
そう言いつつも仁さんはひとつも笑っていなかった。