きみは溶けて、ここにいて【完】




食器を洗い終えたお母さんも席に座って、三人で食卓を囲む。朝のこの時間が、私は好きだった。

心が落ち着く。

一日の中で、唯一気を抜いていられる優しいひと時だ。



 だけど、今日は、それどころではなく、昨日のことばかり考えている。

結局、寝不足のせいかソーセージを一本残して、席をたった。鏡の前で寝癖を直して、歯磨きをする。


自分の顔をぼんやりと見つめていたら、本当にこれは私なのか、少し不安になった。鏡には、平凡な顔で、目の下にくっきりとクマを浮かべた私がいる。



 森田君は、鏡を見たとき、どんな感じなのかな。もう一人の自分――確か、森田 影君ーー彼と、会話できたりするのかな。

メカニズムは、ちっともわからない。今日も、朝から頭がこんがらがってくる。考えるているうちに、あっという間に家をでる時間がきてしまった。



 夢なんじゃないか。
夢であってくれたら。


学校に近づくにつれ、そう思う気持ちは徐々に膨らんでいったけれど、自分の下駄箱をあけた瞬間、あっさりと、その願いは打ち砕かれてしまった。


落胆さえする暇がない。


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