きみは溶けて、ここにいて【完】
朝焼けが薄いカーテンの隙間から、仄かに差し込んでいる。
自分のベッドの上、昨日の放課後のことに動揺してしまって、あんまり眠れなかったけれど、一晩経ってみて、昨日のことは嘘なんじゃないかと思う気持ちが生まれていた。
夢にしないでよ、耳障りのいい声で森田君は言ったけれど、抓った頬も痛かったけれど、それも踏まえて夢なのだと、なんだかもう、そう思い込みたかった。
リビングにいくと、お母さんが朝食を用意してくれていた。目玉焼きとソーセージの乗った皿、その横には湯気を立てたお味噌汁が並んでいる。
「文子、おはよう」
「おはよう」
「……夜更かししたの? クマすごいけど」
「あ、ううん。ただ、あんまり眠れなくて」
本当は食欲もないけれど、朝食を食べないとどうにも力が入らない。自分の席について、お味噌汁を啜ると、鳩尾のあたりが少し痛くなった。
「……お母さん」
食器を洗うお母さんの後ろ姿に声をかける。
一人の人間のなかに二人いるって、お母さんは信じられる?
そう聞こうと思ったけれど、森田君の真剣な顔を思い出して、振り返って、首を傾げたお母さんに、「なんでもない」と首を横に振った。
そうしているうちに、お父さんが起きてくる。