きみは溶けて、ここにいて【完】
誤魔化すように、へらりと笑ったけれど、久美ちゃんは、逃がしてくれる気はなさそうだった。
箸をおいて、机の上に肘をついたかと思ったら、私の方に顔を近づけて、秘密ごとを話すような体勢をつくる。
久美ちゃんは目だけを、森田君たちの円の方に向けて、「あの中に好きな人、いるの?」と囁くように言った。
「……いないよ?」
「本当に? そういえば、私たちって、恋の話したことないよね」
「……確かに、そうだね」
「文子ちゃん、もしかしてだけどさ、」
そこで久美ちゃんがさらに顔を近づけてきたので、右耳を寄せる。
こそこそ話。
クラスメイトの誰かがそれをしていたら、私は自分のことを言われてるんじゃないかって、びくびくしてしまうけれど、この場合は、仕方ないって思うしかない。
誰にもそう思われないように、願うしかない。