きみは溶けて、ここにいて【完】



 他人の言葉で許されることなんてないのに、なんだか、ほんの少しだけ、私は、許された、と思ってしまって、目の奥が熱くなりかける。

だけど、誤魔化すように笑いたくはなくて、うん、と頷いて、ありがとう、と言った。何度も言いたくて、だけど、一度だけにした。



 それから、私と影君は、また他愛もないことをちょっとずつ話ながらネモフィラ畑を一周した。


最初は、まるで海のようだと思っていた場所だけど、途中から、湖のように感じていた。


果てのある、ひっそりとしたところ。影君の瞳のやさしさと同じ。

ねえ、優しさって、美しさと似ているんだね。今まで、そんなこと、知らなかった。




 お昼時になって、ネモフィラ畑をあとにする。

駅に戻る途中に、蕎麦屋の看板を見つけて、私は思い切って、「お昼はここにしたい」と影君に言った。



 影君が、手紙でお蕎麦が好きだと言っていたから、きっと嫌ではないと思って。だけど、自分の意見をはっきりと言うことに慣れていなくて、すぐに謝ってしまいたくなる。

ごめん、と言いかけたとき、影君が、「……僕も、ここがいい」と言ってくれたから、かなりホッとした。




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