きみは溶けて、ここにいて【完】
間違えた。
私が間違えたから、久美ちゃんが泣いている。
影君に手紙でアドバイスをもらったからって、それで安心して、結果がこれだ。
自分の選択が、ひとの悲しみに繋がると、もう、どうすればいいのか分からない。
時々、誰かの悲しみは、全て自分のせいではないかと思ってしまう。
元をたどれば、全部自分に行き着くんじゃないかと思ってしまう。
悲しい自意識が加速して、悪い方へ、悪い方へ、勝手にいってしまって、止めようがなくて、その観念にとらわれてしまう。
この場合は、本当に、私のせいだ。
久美ちゃんの涙がクラスメイトの誰かに見られていたらと心配になって、久美ちゃんの背中をさすりながら、そっと教室を見渡す。
だれも、私たちの方なんて見ていませんように、と思った。だけど、その中で、鮫島君とぱちりと目が合ってしまった。
彼は、にぎやかなグループの中でひとり気まずそうに顔を少し歪めて、私たちの方を見ていた。
振ってしまったから、久美ちゃんが泣いていることに責任を感じているのかもしれない。
鮫島君に、気まずい気持ちをさせてしまっているのも自分のせいのような気がしてきてしまう。
ごめんね、と言いたかった。
気が付いたら、私の口は、そう動いていた。
だけどその間に、鮫島君は私から目を逸らして、グループの会話へ戻ってしまう。