きみは溶けて、ここにいて【完】





 私が傷つけてしまったわけではないんだ。

そう思ったら、ホッとして、手紙を持ったままその場にしゃがんでしまいたくなった。


相変わらず、影君の手紙はとても綺麗で丁寧な字で書かれている。心を近づけてしまったことを、後悔して、少しだけ後ろ向きになっていた気持ちが、またゆっくりと前に向き直る。


 影君の手紙で、林間学校の存在を思い出した。

すっかり、忘れていたけれど、二週間後のことだ。



 いつもであれば、行事事は、とにかく何も嫌なことが起きませんように、と願うだけで。あまり楽しもうという気持ちになれたことがなかった。


林間学校も、自分にとってはそういうものだったけれど、手紙を読んで急に、少しだけわくわくしてきてしまう。

その単純な気持ちの移り変わりが、恐ろしかった。

だけど、嬉しいと言う気持ちに、
どう抗えばいいのか分からなった。




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