敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「美玖はいつもホラーだろ。怖がりのくせにホラー映画ばかり好んで観る」

「そうだけど、たまには違うのもいいかなって。たとえば恋愛映画とか」

そのほうがデートっぽい感じがする。

「なら時間的にあれか? 『ラブダイアリー』」

仁くんが候補に挙げた映画『ラブダイアリー』のキービジュアルは、学校の体育館のバスケットゴールをバックに、部活日誌を抱えたマネージャーとコーチが見つめ合っている。【教師と生徒の禁断のラブストーリー】と書いてあった。

「わあ……ごめん、ちょっとないかな」

私がつぶやくと、仁くんも同意とばかりにうなずく。

「やっぱりホラーだな」

「うん。結局いつもと同じだね」

恋愛映画ならなんでもいいというわけではない。

やっぱり私たちは結婚したところでなにも変わらないなと苦笑いした。

でも仁くんが取ってくれた席はカップルシートで、私は弾かれたように彼を見上げる。

「いつもと同じじゃない」

目をキラキラさせる私を、仁くんは「かわいい反応だな」とクスクス笑う。

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