敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「しないの……?」

「美玖がしたくないんだろ? 夫婦間でもセックスの拒否権はある」

「なによ、拒否権って……」

最初の頃は私がやだやめてと訴えても煽られると言っていたのに。

いつからそんなふうになったの?

私は猜疑心に苛まれ始める。

もしかして、もう私に飽きた? それとも実際に手に入れたら、思ったほど好きじゃなかった? ほかに気になる人ができたとか――。

一気に不安が押し寄せた。

やっぱり雪村さんの話は本当だったのだ。

「美玖、どうしたんだ? なにかあったのか?」

怪訝に思った仁くんが、眉をひそめて私の顔をのぞき込む。

私はすぐに背中を向けて、彼の視線を避けた。

「……なにもないよ。おやすみ」

静かに涙が溢れる。

『移り気の多い彼に捨てられて傷つく前に――』と雪村さんは言ったが、もう手遅れなのかもしれない。

仁くんが心変わりしたのかもしれないと思うと、つらすぎて耐えられなかった。

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