学園恋愛オムニバス
「か、和樹!ほら!あわな彼女と付き合ってたってどっちにしても上手くいかなかったって!」
「カラオケ行って忘れよう!な!?」
「…あぁ」
全力で慰められると余計に辛い。
でも、何だろう?
別に彼女が他の男とあんな事になっていても何も感じなかった。
悔しいとか悲しいとか嫉妬とか…
ただそこまでの気持ちにならない人と付き合ってしまった事の後悔だけ。
その後のカラオケは時間を忘れるくらい楽しかった。
夕飯の前に駅で解散して家に帰ろうとした時だ。
「まだ帰りたくないーっ」
「うぜぇな、お前が私服持ってないからラブホ入れなかっただろ」
「むぅ!学校に持っていかないもん…じゃあお夕飯行こうよー!自分の分お金出すから」
「夕飯だけとかダルいからもう帰れよ、サークルの奴ら誘って飲み会するわ。じゃあな」
「えー!あっくん待って…うーっ」
会話が筒抜けのカップルの彼女の方は紛れもなく安斎さんだ。
大学生と付き合うの流行ってんの?
それにしても彼氏の安斎さんに対する態度酷い…。
安斎さんは俯いて1人で歩き始めた。
もう暗いのに送ってあげないのかよ?
「ねぇ!彼氏と痴話喧嘩?俺が相手してあげるよ~」
「いいー…いらないのっ」
「いいじゃん!俺結構上手いよ?」
あんな会話してたから変な奴に絡まれてるし!
急いで安斎さんのところに行った。
「安斎さん!こんな所で何してんの?」
俺はそう言って横にいる安斎さんに絡んでる男を睨んだ。
「あっ!和樹だぁ!」
安斎さんの表情がぱぁっと明るくなって俺の方に来てくれた。
「…友達に何か用ですか?」
「いや…別に…」
男はそう言って去って行った。
…逆上してくるような奴じゃなくてよかった。
「和樹助けてくれたのー?紳士でジェントルマンじゃん!」
「それ意味同じだから…帰るんだよね?暗いし送るよ」
「いいよー!今日パパもママもいないから何処かでお夕飯食べて帰ろうかなーって思ってたから!」
今の事もあるし、心配だな…
「そうだ、そしたらうちに夕飯食べに来ない?勿論家族いるから変な心配しないでいいよ」
「えっ!いいのー?あ…でも…急に行ったら迷惑だもん…」
「気にしなくていいよ、今日俺の誕生日だからおかずパーティ用だし1人増えても全然問題ないから」
「誕生日なの!?早く言えしー!和樹、おめでとー!和樹のお祝い行きたいなぁ」
「ありがとう!よし、じゃあ決まりな」
一応家族のグループに安斎さんを連れて行くことを連絡して家に向かった。