聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「もうしばらく、おあずけだな。玲奈はあかりに譲る」

 小さく肩をすくめて言う十弥にほほえみ返しながら、玲奈はベッドで泣いているあかりを抱きあげた。抱っこをする手つきもずいぶんと板についてきた。
 授乳をしてあげると、あかりはまたすぐに眠りについた。

「今夜はよく眠るな」
「ね。いつもはベッドに寝かせると目を覚ますのに」

 ふたりで笑い合っていると、サイドテーブルに置いてあった玲奈のスマホが振動した。十弥がそれを取り、玲奈に手渡す。玲奈はメッセージの受信画面を開き、目を見開いた。

「どうした?」
「お母さんから……」

 ずっと連絡を取れていなかった佐和からだった。はやる気持ちを落ち着かせながら、玲奈は文字を目で追う。

【玲奈へ 十弥さんから無事に出産したとの知らせは受け取っていました。彼は会いにきてほしいと言ってくれたけど、やっぱり私にはそんな資格はありません。迷ったすえにメールを送ることにしました。いいお母さんになってあげられなくて、本当にごめんね。玲奈は私ともあの人とも違う。優しくて強い子だから、きっと素敵なお母さんになれると思います。十弥さんと子どもと幸せな家庭を築いてね。結婚と出産、本当におめでとう! 佐和】

 最期の一文は涙でにじんでしまって、なかなか読めなかった。佐和からの『おめでとう』の言葉は玲奈がなによりも欲しかったものだ。スマホを抱きしめ、泣き崩れる玲奈の肩を十弥は優しく抱き寄せた。

「十弥、お母さんに連絡してくれてたんだね?」
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