聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「明るく白っぽい照明に変えられたらいいのに」

 花を見つめながら同時に同じ台詞をつぶやいて、ふたりは顔を見合わせた。どちらからともなく、ふっと笑い出す。

「えっと、会社の方ですか?」

 彼女は笑顔で十弥に聞く。新人だから十弥の顔を知らないのか、もしくはカジュアルな服に伊達眼鏡をかけていることでごまかせているのか、どちらにしても彼女は目の前にいるのが自分の会社の御曹司だとは気がついていないようだ。

「いや、俺はホテルに出入りしてる業者。もう帰るところだ」

 そう嘘をついたのは、ほんの出来心だ。たとえ束の間でも、和泉十弥じゃない男になれるのがなんだかうれしかったから。このままもう少しだけ彼女との会話を楽しみたい、そんなふうに感じていた。

「ホテルの人間に照明を変えられるか、確認してみたらどうだ? もしくは……」

 十弥は悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼女を見る。

「ここでぱっと花の色を変えられる妙案を考える」

 彼女はクスクスと笑いながら、十弥の雑談に付き合ってくれる。

「う~ん、絵具で色をつける。あ、いいこと思いつきました! 手品師を呼ぶ」

 彼女の笑顔に十弥は心が安らぐのを感じた。

「一瞬で花の色を変えられる発明をしたら、どこかに需要があるかな?」
「確実にあります。少なくとも、私は今そんな商品が欲しいです」

 言いながら、彼女は優しく目を細める。

「こういう話って楽しいですよね。どこかで誰かが求めているからしれない商品を探す。私、それをしたくて商社に就職したんです!」
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