聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「君は無理することはない」
 それは十弥の優しさだったのだろうが、玲奈は複雑な気持ちになった。女性秘書を嫌がる彼に、女性だからとかばわれたようで少し悔しい。

「全然、大丈夫ですから!」

 玲奈は登坂の手からおちょこを奪うと、ぐいと一気に飲み干した。かぁっと喉が熱くなったが、平静を崩さなかったのは玲奈の意地だ。

「おぉ、いい飲みっぷりだ」

 登坂は大喜びで玲奈に次々と酒を勧める。それでも会食を終え登坂を見送るまでは、玲奈は顔色ひとつ変えなかった。自分で自分を褒めたいくらいだ。

「いつもあまり飲まないから酒は好きじゃないのかと思っていたが……強いんだな」

 十弥は横目でちらりと玲奈を見て、口元をゆるめた。

「えぇ」

 それだけ答えるのがやっとだった。本音を言えば、一刻も早く十弥と離れたい。なんでもない顔をしているのも、もう限界に近かった。
 頭がふわふわして視界が大きく揺れている。足元もおぼつかず、玲奈のところだけ地盤沈下が起きたかのようだ。倒れそうになった玲奈はとっさにその場にかがみこんだ。
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