聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「おい、芦原。どうした?」

 血相を変えた十夜の顔もぐにゃりと歪んで見える。

「すみません、タクシーを……私、本当はお酒がダメで」

 急激に具合が悪くなっていくのを感じながら、玲奈は正直に白状する。痛恨の失態だ、あと少し我慢できれば、今夜のミッションはほぼ完璧だったのに……。だが今、十弥に帰られてはまずい。とてもじゃないが、自分でタクシーを呼ぶことなんてできそうにない。

「はぁ?」

 十弥の目が大きく見開かれる。それとは反対に玲奈のまぶたはゆっくりとおりてくる。
 そこからの記憶はどうにも曖昧で断片的だ。

「あぁ、はんっ」

 自分の発する声とは思えないほどの甘い嬌声が玲奈の唇からこぼれ落ちる。大きな手が彼女の胸を撫で回し、ぷっくりと膨れた先端を摘まみ、舌先で転がす。キスは媚薬のように甘く、玲奈は我慢できずに何度もそれをねだった。
 たくましい腕に抱きすくめられ、筋肉質で美しい胸板に玲奈は顔を埋めた。激しく突きあげられるたびに、玲奈の身体はしなるように揺れる。身体に刻みこまれるような快楽に玲奈は抗えず、その身をゆだねた。

「かわいいな、――は」

 どうしてか彼の顔は見えない。自分の名を呼んでくれたはずなのに、肝心な部分がノイズに邪魔され聞き取れなかった。
 彼の気配が遠ざかっていく。玲奈は夢中で手を伸ばし叫ぶ。

「待って、誰なの!」
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