聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 一瞬、自分の予定を聞かれたのかと思ってしまった。だが、すぐに間違いに気がついて玲奈は少し自分を恥じた。玲奈は彼の秘書なのだ。

「今夜はなにも入っていませんよ。帰国したばかりですから、少しは身体を休めてください」

 玲奈の返答に彼はくすりと笑う。

「俺じゃない。君の予定だ」
「あぁ、私も今夜は空いています。なんの仕事でしょうか」

 残業に応じられる旨を玲奈は伝えた。だが、彼はあからさまにむすっとした顔になる。

「仕事じゃない。久しぶりに会えたのだから食事でもどうかと思った」

 玲奈は小首をかしげた。彼の日本語はどこか変じゃないだろうか。ひと月も海外にいたから、調子が狂ったのか。

「接待が入ったということでしょうか?」

 十弥は長身をかがめるように腰を折り、玲奈の顎をくいと持ちあげた。

「違う。君をデートに誘っている」

 予想外につめられた距離に玲奈はうろたえる。どう考えても、今日の十弥はおかしい。玲奈の知る和泉十弥とは別人だ。
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