聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 翌朝、玲奈は佐和に電話をかけた。

「もしもし。昨日、お通夜に参列してきたよ」
『そう、ありがとう』

 佐和の声はなにかつきものが落ちたかのように、さっぱりとしていた。

「お母さん」

 玲奈は少しだけ勇気を出すことにした。

「今まで、お母さんのことを知ろうともしないでごめんね。それから、育ててくれて本当にありがとう」

 ごくりと息をのむような気配のあとで、佐和はこらえきれなくなったように嗚咽をもらした。いつだって気丈だった彼女のそんな姿は初めてだった。

『ごめんねも、ありがとうも、言わないで。あなたにそんな言葉をかけてもらう資格は私にはないのよ』

 幼い子どものように泣きじゃくる彼女の声を、玲奈はじっと聞いていた。ようやく泣き止んだ佐和が言う。

『玲奈。もう私のことは忘れて。あなたの害でしかなかった母親も父親も忘れて、玲奈は幸せな家庭を築いて』
「お母さん、待ってよ」

 玲奈は必死に呼び止めたが、電話はぷつりと途切れてしまった。

 何度かけても佐和は電話に出ないので、実家をたずねてみようかと思っていた矢先に玲奈は切迫流産の兆候で倒れてしまった。そこからは入退院を繰り返すような日々で、出産までは絶対安静を言い渡されてしまった。仕事が多忙な十弥に代わり、祥子がつきっきりで玲奈の世話をしてくれた。
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