聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 八月末。玲奈はようやく正産期と呼ばれる時期を迎えることができた。

「やっとここまでこれたな」

 はちきれそうなほど大きくなった玲奈のお腹に手を当てながら、十弥は口元をゆるませた。玲奈も自身の腹部にあたたかい眼差しを注ぐ。

「うん、ようやく。十弥にも祥子さんにも会社にもたくさん迷惑をかけちゃったけれど」

 この数か月、玲奈はほとんど出社することができないような状態で、秘書室のみんなには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。例の鉄道プロジェクトも順調に進んでおり、十弥は忙しい日々を送っていた。秘書として、彼をサポートをできないことを玲奈は歯がゆく思う。

「気にするな。生まれてくる新しい命より大事な仕事はない」
「うん。次に誰かが困ったときには私も全力でサポートする。秘書室のみんなにそう伝えてください」
「わかった」

 生真面目な玲奈に十弥はふっと目を細めた。

「もうすぐ会えるんだね」

 玲奈はお腹を見つめながら、つぶやく。

(私がお母さん……私の娘……)

 お腹の子は女の子であることが数か月前に判明している。それからずっと名前を考えているのだが、いまだに決まらない。仕事では即断即決な十弥も娘の名前にはおおいに悩んでいた。
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