西岡三兄弟の異常な執着
今にも松久に飛びかかりそうな朱雀。
黄河と真白が、朱雀を挟むように両側に座った。

「朱雀、落ち着け!
ゆっくり、深呼吸しろ…」
黄河が朱雀の背中をさすりながら、ゆっくり話しかけた。
「はぁはぁ……兄さん、助けて!
頭が割れそうに痛いよ。
息ができない……」
朱雀は頭を抱え項垂れた。
「大丈夫だ!ゆっくり深呼吸するんだ、朱雀」
「朱兄ちゃん!
落ち着いて!
俺、どうしたらいい?苗を呼ぼうか?」
真白は朱雀の手を握り、顔を覗き込んだ。

「真白…」
「ん?苗を呼ぶ?」
「ううん…こんな穢れたとこに連れて来ちゃダメ。
だって……
そこに、下衆な、ゴミがいるだろ?」
そう言うと、松久を睨みつけた。

「朱雀、コイツには一生地獄を見せてやる。
朱雀の苦しみを味わわせてやろうな!」
「うん…」
「朱兄ちゃん、大丈夫だよ!
俺達がいるよ!なにより、苗がいるよ!」
「うん…ありがとう、兄さん、真白!
僕は二人のことも、大切だよ!」

それから基一が現れ、松久を引きずるように連れていった。
最後まで松久は“お願いします!許してください!
ご主人様!若様!坊ちゃま!”と叫んでいた。


その後仕事を終え、屋敷に帰った三兄弟。
花苗が少し悲しそうに待っていた。
事情を話し、松久のクビを撤回しなかったことを伝える。
「そう……わかった…」
と、小さく頷いて受け入れたのだった。

「今回の方達、みんな一生懸命してくださってるから、安心してたのになぁ…
悲しいね……」
「………」
三人は、これ以上何も言えなかった。

「………あっ!!ちょっと、待って!!
もう、私物はないんだよね?」
突然、花苗が思い出したように声を発した。
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