天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「そんな……。俺にも責任が」
「責任があると思うなら、黙っていてくれと言っている。絢美もお前に会う気はない」
突き放すようにそう言って、聡悟は俺の部屋を去っていく。
俺は呆然とその場に立ち尽くしたまま、なにもできない自分の無力さを呪った。
絢美に連絡をしようと何度も思い立つものの、聡悟と彼女の立場を考えると、結局実行に移せぬまま日々は過ぎた。
カレンダーは二月に変わり、寒々しい景色はもううんざりだと思いながら、夕方の病棟の廊下を歩く。
カナダの方がずっと気温が低かったはずなのに、日本にいる今の方が寒く感じる。
俺の人生にはもう二度と、春という季節は訪れないのかもしれない……。
感傷的になりながら、医局に戻る途中。俺は未だに苦手なナースである、望月さんの姿を見つけてぴたりと足を止めた。
彼女はあれからも、事あるごとに俺に迫ってきては、スキンシップを図ろうとする。患者やほかのナースの前で、さも仲がいいようにアピールされて困ることも多い。
俺がその都度迷惑そうにしていることには彼女も気づいているはずなのに、まったくめげる様子がない。
俺にとって病院は安息の地であるはずなのに、彼女の姿が見えるとつい避けてしまう。