天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 というわけで、今日も条件反射で彼女を避け、近くのカンファ室に飛び込み身を隠すことにした。

 扉のわきの壁に背を預け、数分だけここで時間をやり過ごそうと決める。

 その時、あろうことか扉が開いて、誰かが入ってきた。俺の姿はちょうどは扉の陰で死角になり、入ってきた人物には気づかれていないようだった。

「ねえ、貴船先生~。ご褒美」

 甘ったるいその声は望月さんのもので、俺は肝を冷やした。彼女、俺がここに隠れるのに気づいていたんだ。もう逃げられない……。

 ゆっくり閉まっていく扉の陰でうずくまり、観念した直後。

「感謝してるよ。きみの働きのおかげで勇悟を悪者に仕立て上げられたのだからね」

 もうひとりの〝貴船先生〟の声が聞こえ、俺は一瞬状況が呑み込めなかった。

 そのうち、「ん……」と、望月さんが鼻にかかった声を漏らす。思わず顔を上げると、聡悟の手が望月さんの顎をすくい、口づけしている光景が目の前に現れた。

 な……なんだ? この状況。

 俺は呆気にとられつつ、ふたりが目を閉じている間にそっと机の陰に身を隠す。

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