天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
きざなセリフを吐いた聡悟は、絢美の頭にポンと手をのせてよしよしと撫でる。絢美は恥ずかしそうにしながらも、幸せそうに笑っていた。
今の……どう考えても、デートの約束、だよな。
なんで俺、自分が選ばれると思っていたんだろう。
誰にでも優しく、頭の回転が速く、生徒会などの活動にも積極的に参加し、推薦入試で医学部に合格した優等生の聡悟。
かたや、中高では部活のサッカーに明け暮れ、三年になってから慌てて受験勉強を始め、一般入試も合格ラインすれすれという、劣等生の俺。双子で同じ顔なら、質のいい方を選ぶに決まっている。
なんでもないことのように自分に言い聞かせても、虚しいだけだった。
俺は絢美に惹かれていたのか? ……いや、そんなこと解明するだけ無駄だ。
俺は結局彼らに声をかけずにベンチから離れ、校舎内に引き上げた。
その日からふたりが付き合い始めたかどうか、本人たちに直接確かめたわけではない。
しかし、聡悟は明らかに前より絢美との距離が近いし、彼女を見つめる視線も甘い。今までのように三人で行動することすらだんだん苦痛になった俺は、自然と彼らを避けるようになった。