天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

そして無事大学に合格し、迎えた卒業式の日。

『勇悟、卒業おめでとう!』

 式が終わるなりさっさと帰ろうとしていた俺に、なぜか校門前にひとりでいた絢美が駆け寄ってきた。

『ああ、サンキュ。聡悟なら、女子たちにつかまってるからまだ来ないと思うぞ』

 絢美と目を合わせないままそっけなく言って、校門を出る。しかし、すぐに歩幅の小さな絢美の足音が追いかけてきて、彼女は俺を引き留めるように、肩から下げていたスクールバッグを引っ張った。

 思わず振り返って怪訝なまなざしを向けると、絢美はなぜか泣きそうな顔をしていた。

『違う! 勇悟に渡したいものがあって……』

 ……渡したいもの? なんで俺に?

 そう思いつつも、自分のバッグを探る絢美を見守っていると、『はい、これ』と、小さな紙袋を差し出された。

 中に入っていた箱を取り出しふたを開けてみると、中身はチョコレート色のレザーを使ったキーケースだった。

『勇悟の卒業記念になにかプレゼントしたくて、自分で作ったの』
『作った? えっ、買ったんじゃなくてか?』

 見た目は既製品と遜色ない仕上がりで、中学生の絢美が作ったとは思えない。

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