天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
半信半疑でキーケースのあちこちを確認する俺に、絢美が説明する。
『桜木町に、レザークラフトの体験ができる工房があってね。難しいところは先生にも手伝ってもらったけど、そのステッチは私の手縫いだよ』
『ホントか? すごいな、ありがとう。大切に使わせてもらう』
素直にお礼を言って笑いかけると、絢美はなぜか困ったように眉尻を下げ、挙動不審に目を泳がせた。
『絢美?』
心配になって彼女の顔を覗こうと身を屈めたら、絢美は大きな目を見開いて硬直し、じりじりと後ずさりをしながら口を開く。
『よ、用は、それだけだから。頑張ってね、大学生活!』
俺の目を見ることなく、まるで捨て台詞のようにそう言い残すと、絢美はひとりで走り去ってしまった。
なんだったんだ……?
呆気にとられたまま校門の前に取り残された俺は、再び絢美がくれたキーケースに視線を落として、考え込む。そしてすぐにハッとした。
『そうか……。俺〝だけ〟にプレゼントを贈ってるわけ、ないよな』