天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 俺はさんざん悩んで、日付が変わる頃絢美に電話した。

 もし寝ていたらまた改めてかけ直そうと思いながら待っていると、長いコール音の後、絢美がかすかな声で『はい』と出てくれた。

『あー、悪い。遅い時間に』
《う、ううん。私も、眠れなくて》
『……そうか』
《暇だったから、ちょうどよかったよ》

 あんなにひどいことをして、その後謝るでもなくさらに冷たい態度を取った俺なのに、絢美は普通に話をしてくれる。

 聡悟に優しく慰められて、俺とのキスなんてもう記憶の彼方へ忘れ去られているのかもしれない。しかし、それでも謝るって決めたんだ。

『あのさ……さっき、ごめん。絢美の気持ちも考えず、あんなことして』
《あんなことって……》
『キスしたこと。本当に、悪かったと思ってる。だから、なかったことにしてくれていい』

 電話だというのに、俺はベッドの上に正座してぺこりと頭を下げていた。絢美はしばらく黙り込んでいたが、やがてかすかなため息が聞こえたような気がした。

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