天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 後ろの車両からは楽しげにはしゃぐ声も聞こえたが、私は真剣な顔で歯を食いしばり、恐怖を逸らすように〝ご褒美のため。ご褒美のため〟と頭の中で繰り返した。

「あー、おもしろかった。絢美、仁王像みたいな顔になってたぞ」

 コースターから無事に生還し、ホッとしながら歩きだす私の横で、勇悟はまたしてもおかしそうに肩を揺らした。

「しょ、しょうがないでしょ、怖かったんだから!」

 ぷりぷりして口をとがらせていると、勇悟が突然身を屈め、私の顔を覗き込んだ。

 至近距離からジッと見つめられ、思わずドキッと胸が鳴る。

「一応、泣いてはいないみたいだな」
「えっ……?」
「なにがいいんだよ、褒美。自分から要求しといてもう忘れたのか?」

 そんな勇悟の言葉を聞き、私は急に恥ずかしくなった。

 一瞬、キスされるかも……なんて身構えた自分のお花畑脳に呆れる。

「え、えっとね! クレープ! クレープ奢ってほしいな!」
「了解。どこに売ってるんだ?」
「待って、マップ見るから……」

 私のバッグに入れていたマップを広げ、飲食店を探す。すると勇悟も脇から覗き込んできて、再び近づいた距離に頬が勝手に熱くなる。

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