天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
桃瀬さんはしばらくうつむき気味に視線を泳がせていたけれど、やがて意を決したように私を見つめ口を開く。
「弟さんが欲しいのは、絢美さんじゃなくて貴船総合病院の院長の座。そう考えた方が辻褄が合いませんか?」
「えっ?」
「だって、海外にいる間、一度も連絡をくれなかったんですよね? なのに、いきなりお兄さんと絢美さんの中をぶち壊しにきて、三カ月で無理やり絢美さんの心を手に入れようなんて、腹の中で悪どい計算をしているとしか思えませんか?」
訴えるような眼差しで言い聞かせられると、先ほどまで勇悟と幸せなデートをしていたのが嘘みたいに、私の自信は失われていった。
そういえば、家族会議の時――。
『絢美さんの心を見事射止めた方が、次の院長になるというのはどうだ?』
彼らのお父様のそんな提案に取り乱したのは聡悟くんだけで、勇悟は落ち着き払っていた。
もしかして、事前にお父様は勇悟だけに連絡をしていて、院長の座を継がせる条件について話していたのではないだろうか。だから急に帰国して、私に言い寄った……。
よく考えれば納得できることばかりで、私の心はどんどん沈んでいく。