天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
自然と視線も下向きになって自分の足元ばかり見ていたら、桃瀬さんが一歩私に歩み寄り、気遣うように声をかける。
「絢美さん、前に私がギャンブル狂の彼氏とズルズル付き合いを続けていたのを叱ってくれましたよね。私、あの時のことすごく感謝してるんです。だから、今度は私が絢美さんを助けたい。絢美さんには、幸せな結婚をしてほしいんです」
「桃瀬さん……」
彼女の優しさが胸に沁みる反面、勇悟への気持ちをそう簡単に割り切ることはできず、心が揺れる。
私の幸せってなんだろう。勇悟の企みにこのまま気づかないフリをして、愛されている錯覚に浸ること? それとも、心から私を想ってくれる聡悟くんを自分も好きになれるよう努力をして、彼と結婚すること?
自分の気持ちがすっかり迷子になり、途方に暮れる。
「そろそろ戻りましょうか。お医者様の前で仮病を使うのにも限界があるので、柿田さん、そろそろ困っている頃かもしれません。聡悟さんとのデート、引き続き楽しんでくださいね」
「桃瀬さん、実は彼……」
私はそう言いかけ、口をつぐんだ。
彼こそが、腹黒い企みを抱えて私のそばにいる聡悟くんの双子の弟・貴船勇悟だと、今さら告げてなんになると言うのだろう。