天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「絢美。病院へ行こう。僕も同行する」
「ありがとう。でも、ひとりで大丈夫……」
「曲がりなりにも僕は医者だ。妊娠していてもしていなくても、体調が悪いきみをひとりで行かせるわけにはいかない」
結局聡悟くんの熱意に負け、休日でも開いている産婦人科を探して受診した。
先に尿検査を済ませてから診察室に呼ばれ、カーテンで区切られた内診台でエコー検査を受ける。
しかし、診察室には『僕がパートナーのフリをする』と聡悟くんが一緒に入ってきており、カーテン越しに聡悟くんがいると思うと、内診がとても苦痛に感じた。
診察してくれたのは優しそうな白髪の女性医師で、内診の後、私と聡悟くんを交互に見つめて目を細めた。
「胎嚢が見えていますから、妊娠されていますよ。まだ小さくて今日は心拍が確認できませんので、一週間後にまた来てください」
「やったな、絢美」
先生の言葉を受け、聡悟くんはまるで自分が父親であるかのように感動をにじませた笑顔を浮かべる。
しかし、私はその祝福ムードに反して不安な気持ちでいっぱいだった。
聡悟くんと病院からタクシーで帰る途中、気が緩んでつい涙がこぼれる。
「どうしよう……。勇悟になんて話せばいいのかな」