天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
毛布を体に巻き付けた絢美がドアを半開きにしてこちらを覗いていて、俺がその場まで歩いていくと、「シャワー、借りてもいい?」と恥ずかしそうに微笑んだ。
胸の底から愛おしさがあふれて、思わず抱きしめてしまいたくなる。しかし、俺は彼女に触れる勇気が出ず、ただ笑顔を作るだけ。
「ああ。寒かったら、暖房つけて。後でタオル置いておく」
「わかった。ありがとう」
廊下を引き返して浴室の方へ向かう絢美の背中に、微かな声で「ごめん」と呟く。
傷つけて、ごめん。俺の気持ちばかりを押しつけて、ごめん。
大切な誕生日を一緒に過ごした相手が……聡悟じゃなく俺で、ごめん。
胸の内で何度も謝るたびに、開いたばかりの心の扉が再び固く閉ざされていくような、軋んだ音を聞いた。
*
「そう。正月も休みなしでいいんだな?」
「ああ。この病院に早く慣れないと、先生方やナースに迷惑をかけるし」
月曜日の午後、心臓血管外科の責任者としてシフトを組んでいる聡悟に、俺は年末年始の勤務日について相談していた。
すでに出ていた予定表では大晦日や正月に休みを入れてもらっていたが、すべて返上して出勤すると申し出たのだ。
絢美と会う暇を作らず、仕事のことだけ考えていたかった。