天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「ふうん……。まぁ、助かるよ。お前がいてくれれば緊急のオペにも対応しやすいしな」
聡悟はなんとなく俺の目的を察しているのだろう。デスクに肘をつき、目の前に立つ俺を意味深な目で見上げつつも、パソコンですぐに新しい勤務予定を作り直し、医局の皆に共有した。
用が済み、回診に出かけようと俺が踵を返したその時だ。
「絢美のことなら心配しなくていい。遅くなったが、今夜は僕も誕生祝いをしてやる約束をしているんだ。そこで、お前につけられた傷を癒してやるつもりだよ」
「……そうか」
「なんだか、いつかも似たようなことがあったな。昔から、お前は絢美を傷つけてばかりだ。おかげでこっちは役得だけどな」
振り向かなくても、聡悟が勝ち誇った顔をしているのがわかる。
絢美を傷つけている自覚は俺にもあるので、返す言葉が見つからず、俺は無言で聡悟の前を去った。
今夜は当直だ。絢美と聡悟が一緒に過ごすとわかった今、家でなく病院にいられるのは幸運かもしれないな。投げやりにそう思いつつ、俺は回診のため医局を出て行った。